戸田城聖全集第二巻質問会編238ページより(↓クリックで拡大します)
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ある時、報告にやってきた参謀の滝本欣也が、戸田にたずねた。

「先生が一日の落慶法要でいわれましたように、御書も発刊され、大講堂も建立された今、学会は身延をしのぎ、もはや、敵はなくなったと思います。これからの学会は、何を敵として進んでいけばよいのでしょうか」

戸田は、横になっていたが、質問を聞くと、布団の上に起き上がった。そして、滝本の顔を見て、言下に答えた。

「敵は内部だよ」

実は、そのころ、学会員同士の共同事業の失敗や金銭貸借から、怨嫉が起こり、それが組織での人間関係に亀裂をもたらすという、由々しき事態が生じていた。

また、一部に、学会の組織を利用して、保険の勧誘や商品の販売を行う者があり、いたく戸田を悩ませていた。

ことに、それを行った者が幹部である場合には、会員は無下に断ることもできず、不本意ながらも、勧めに応じてしまうというケースも、少なくなかった。

戸田は、広宣流布の組織である学会が、個人の利害によって攪乱されることを深く憂慮し、それらの行為を、「信心利用」「組織利用」であるとして、厳しく戒め、固く禁じていた。

学会の組織は、広宣流布という聖業の成就のための組織である。

戸田が会長に就任してから七年に満たない短日月のうちに、学会がこれだけ大きな飛躍を遂げたのも、どこまでも清浄に、いっさいの不純を排して、厳格な運営が行われ、広布の聖業に向かって邁進してきたからにほかならない。

その組織が、私利や私欲によって利用されれば、学会の崇高な目的は汚され、異体を同心とする同志の団結も破壊され、広宣流布は根底から蝕まれることになるだろう

戸田城聖は、まさに、佐渡御書に仰せの、「外道・悪人は如来の正法を破りがたし仏弟子等・必ず仏法を破るべし師子身中の虫の師子を食」との御聖訓が、現実となりつつあることを、強く実感せざるをえなかった。

学会は、信仰によって結ばれ、相互の信頼を基調とした善意の人の輪である。同志というだけで人を信じもし、安心もする。困っている人にはなんらかの手を差し延べてあげようとする思いも強い。

それだけに、悪意の人に、利用されかねない面があることも事実であった。いわばは、会員の信頼と善意に、巧妙に付け入ってきていたといってよい

戸田は、それを防ぐために信仰のうえで知り合った同志間の共同事業や金銭貸借、また、組織を利用しての商売を厳禁し、学会の鉄則としたのである。

そして、これを破り、会員に迷惑をかけた幹部は、解任も辞さぬ決意をしていた。彼は、邪悪の付け入る余地を、微塵も与えまいとしていたのである。

しかし、自己の利益のために学会の組織を利用しようとする者は、今後、学会が大きくなればなるほど、さらに、出てくるであろうことを、彼は予見していた。

それゆえに、戸田は、今後の学会の敵は何かという滝本欣也の質問に、即座に「敵は内部だ」と答えたのである。

しかし、それは同時に、滝本自身に対する、戸田の警鐘でもあった。

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